« 『浜離宮』 | トップページ | 『開国博Y150』 »

『門前町の経済学』

長野の善光寺に行ってきた。
7年に1回の御開帳が行われている。
2ヶ月弱の期間中に訪れる参拝者は600万人に上る。
長野新幹線が開業してから2度目の御開帳だが、前回は史上初めて期間中の参拝者が600万人を越え、新幹線効果を実証する結果となった。

善光寺の本尊は阿弥陀如来、観音菩薩、勢至菩薩の三体の仏を一つの光背にまつることから「一光三尊阿弥陀如来」と呼ばれる。
1400年前の創建直後から秘仏となり直接拝むことはできないが、代わって同じ姿の分身仏「前立本尊」」を7年に1度だけ本堂に安置し参拝できるようにするのが御開帳だ。
ご利益がどれだけあるかは信じる人の気持ち次第だが、それにしても驚くばかりの集客力である。
新幹線ができて東京に上ることが便利になる一方で、なかなか下ってきてくれる人がいないのが地方の悩みだが、長野に下らせる最大のソフトこそ善光寺である。
全国を見渡しても衰退が目立つ商店街が多い中にあって、比較的元気な商店街のキーワードに「門前町」がある。
浅草仲見世、巣鴨とげぬき地蔵通り、鎌倉小町通り、名古屋大須、大阪天神橋筋など全国的な知名度をもつ商店街はみな「門前町」だ。
一般に門前町の商店街にはいくつか共通点がある。
まず広域集客であること。
善光寺や伊勢神宮、あるいは鶴岡八幡宮など商圏は近隣を越え日本全国に及ぶ。
次に企業で言うならCI、コーポレートアイデンティティーにあたる町並みの統一がやりやすい。
善光寺商店街をみても白壁の統一感は見事で、郵便局や銀行から公衆電話ボックスまで白壁と瓦の町並みにデザインを合わせており、さながらテーマパークのようだ。
販売商品にオリジナリティがあり、販促イベントに巧みなのも門前町の特徴だろう。
近くに大型ショッピングセンターが進出して安売り攻勢をかけたとしても、門前町商店街は競合商品をあまり販売していないから影響を受けにくい。
浅草仲見世に卵や肉、あるいは紳士服スーツや靴などを買いに行く人はまずいない。
雷おこしに人形焼き、羽子板に朝顔を買い求める人が多いのだからショッピングセンターはライバルにはならないわけだ。
善光寺でも信州そばにおやき、野沢菜に寒天ゼリーが主力商品である限りは大型店と共存できる。だいたい成熟社会においては価格の安さよりも、いかに販促イベントを効果的に打ち消費者の心理に訴えるかが大きなテーマだ。その点門前町商店街はもともと祭礼に縁日と神社仏閣とタイアップした販促イベントには慣れている。これも見逃せないことだろう。
もうひとつ門前町商店街に指摘しておきたい大きな特徴がある。
それは「行った人は帰ってくる」ということだ。
普通門前町商店街は最寄りの駅などから参道沿いに店がならび、いちばん奥に神社仏閣があるから、大多数の人は同じ道を往復することになる。
往路からものを買い込む人はまあいない。とりあえずお参りを済まそうとまずは参拝へと向かう。しかしあそこにまんじゅう屋がある、あそこのそばはうまそうだとか下見の意味が往路にはある。
ようやく神仏の前に行き賽銭を投げ手を合わせると、気分は晴れやかになる。
「ああお腹もすいた、そうだみやげも買わなくちゃ」。
折り返しの後は一気に買い物競争となる。往路の下見で段取りは決まっているから目星のつけてある店を渡り歩いてゆく。
多くの商店街はいまやシャッター通りと化し、足早に通り過ぎる空間となっている。
単なる通り道であれば残っている店もゆっくり見てもらえなくなる。
同じ道を短時間のうちに往復してくれる門前町の参道は、商売の面からみて大変ありがたい動線を形成している。

この門前町の繁栄をビジネス成功のヒントにしたい。  

Dvc00426_4Dvc00429_4

|